熱中症、こんな人は特に注意!
室内で過ごす人
室内でも発生する熱中症
室内熱中症はなぜ起こる?
熱中症というと、日ざしのある屋外で発生するイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、室内にいても、条件によっては熱中症になることがあります。
発生原因としては、屋外での熱中症と同様、
- ① 環境 :室温や湿度の高さ、風通しの悪さ
- ② からだ:乳幼児や高齢者、体調不良
- ③ 行動 :長時間の作業、水分補給できない状況
などがあります。
近年の室内熱中症の発生状況
総務省消防庁によれば、2017年から2019年の熱中症発生場所は3割から4割が敷地内全ての場所を含む住居となっており、室内での熱中症の発生も多くなっています。
室内での熱中症は、室内で過ごしている間に室温や湿度の上昇など、環境要因で起こるほか、屋外での活動後に室内で適切に体を冷やすことができず熱中症になる場合や、夜間に冷房を使用しないことで屋外の気温が下がっても室温が上がり、寝ている間に熱中症になる場合もあります。
室内熱中症の対策ポイント6箇条
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1. 温度と湿度を気にする
室温や湿度は家や部屋ごとに異なります。温度計・湿度計・熱中症計を使用して、いま自分のいる環境について気にかけるようにしましょう。
室温が高い時だけでなく、湿度が高い時も熱中症に注意が必要です。冷房機器や除湿器などを使用して、快適な環境を保つようにしましょう。 -
2. 室温を適切に保つ
扇風機やエアコンを使用して、室温を適度に下げましょう。室温は日当たりなどでも変化します。過ごす部屋の窓の方角にも注意し、遮光遮熱機能のあるカーテンやシェード、すだれやよしずなども活用して、快適な室内環境を保ちましょう。
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3. こまめな水分補給/適度な塩分補給/休憩
室内にいる時は、屋外にいる時に比べて、日ざしを浴びたり汗をかいたりすることが少ないため、のどのかわきを感じにくいことがあります。のどがかわいていなくても、こまめに水分をとりましょう。汗を大量にかいた時は、適度な塩分補給も重要です。
仕事や家事、作業や遊びなど、集中していると知らずに水分を失っていたり、疲れていたりすることもあります。室内で過ごす時は、休憩のタイミングを決めて意識して休むことも大切です。
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4. 生活リズムを整える
睡眠不足や体調不良、栄養不足も熱中症になる危険を高めます。
バランスのよい食事やしっかりとした睡眠をとり、丈夫な体をつくりましょう。体調管理をすることで、熱中症にかかりにくい体づくりをすることが大切です。 -
5. 体を暑さに慣れさせる
体が暑さに慣れていない状態での急な暑さは熱中症になりやすくなります。適度な運動や、湯船につかって入浴をすることで、体を暑さに慣れさせましょう。
運動時や入浴時は前後に水分補給・塩分補給をすることも忘れないようにしましょう。 -
6. 自分も家族もなるかもしれないとお互いに気にかける
室内でも熱中症になるかもしれないということを覚えておき、周囲の人にも伝えましょう。
家族や友人同士でお互い気にかけることも大切です。
対策ポイント6箇条を実践し、室内で熱中症を予防しましょう。
シーンごとの対策
室内でもシーンごとに熱中症に注意が必要です。

キッチンで料理する時
キッチンで火を使って調理すると、熱とともに蒸気による湿気が発生して高温多湿の環境が生まれるため、注意が必要です。
エアコンや換気扇の活用、できるだけ火を使わない調理方法に切り替える、水分補給や体の冷却などで熱中症の対策を行いましょう。
こんな人は特に注意!「キッチンで火を使う人」
冷房の効いていない場所・湿度の高くなりやすい場所の掃除をする時
廊下や脱衣所・洗面所などの冷房の効いていない場所や、トイレなどの狭い場所、お風呂などの湿度の高くなりやすい場所では、他の部屋に比べて高温多湿になりやすいため、注意するようにしてください。
換気や冷却グッズの活用、こまめな休憩、十分な水分・適度な塩分の補給を行い、熱中症の対策をしてください。
子どもが遊ぶ時
子どもは体が小さいため、環境の影響を受けやすくなります。また、汗をかく能力が低かったり、自分の体の不調をうまく伝えることができなかったりするため、室内の環境や衣服、顔色などを保護者が注意するようにしましょう。
室温を適度に下げ、できれば保護者の目の届く範囲で遊ぶようにし、子どもたちだけで遊ぶ場合も、自由に飲み物を飲めるようにしておきましょう。
こんな人は特に注意!「こども」
在宅ワーク時
仕事に集中していると、水分補給や休憩を忘れてしまいがちです。のどがかわいていなくても、決まった時間に水分補給するようにするなど、仕事の中に休憩や水分補給を組み込むのも良いでしょう。
パソコンなどの電子機器を使う場合は、機器から発熱する場合もあるので、室温を確認し、適切に冷房機器を使用してください。
高齢者が部屋で過ごす時
高齢者は体内の水分量が減少しているにもかかわらず、温度に対する感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいといわれています。周囲の人も注意して気にかけるようにしましょう。
のどがかわいていなくても水分をとることを心がけ、食事の中にキュウリやナスなどの水分を多く含む食材を取り入れたり、みそ汁や漬物などで適度に塩分を補給したりすることで、熱中症の対策をしていきましょう。
こんな人は特に注意!「高齢者」
ペットと過ごす時
犬や猫も高温多湿な環境に長時間晒されることで体温が上昇し、高体温及び脱水によって熱中症になることがあります。
初期症状にはパンティング(ハアハアと激しく呼吸する様子)、よだれが大量に出る、歯肉や舌、結膜などの充血やうっ血、頻脈(心拍数が増加している状態)などがあります。
対策としては、屋内を涼しく保つことが重要です。風通しを良くし、暑い時期の室内温度は26度以下になるようにしましょう。ペットが自由に居場所を選択できるようにしたり、水を飲める環境を整えたりしましょう。
様子を見て少しでもおかしいと感じた場合には、動物病院を受診するようにしてください。
こんな人は特に注意!「犬や猫を飼っている人」
熱ゼロ研究レポート 飼い主に聞いた「愛犬の熱中症」に関する調査
入浴時
体を暑さに慣らすためにも、入浴は重要です。シャワーだけで済ませずに、湯船につかって温まりましょう。入浴の前後に十分な水分補給をしてください。大量に汗をかいた場合は水分だけでなく、塩分の補給も必要です。
暑い時期に入浴する時は、お湯の温度が熱くなりすぎないように注意し、換気も忘れないようにしましょう。
睡眠時
昼間に建物が暖められると、夜になって外の気温が下がっても、室温がなかなか下がらない場合があります。締め切った室内では、夜間に室温が上がってしまう場合もありますので、適切に冷房機器を使用し、快適な睡眠環境を作りましょう。寝ている間にも水分は失われるため、寝る前に水分補給をしたり、枕元に飲料を置いたりしておくと良いでしょう。
ベランダや庭で作業をする時
ベランダや庭は室内ではありませんが、洗濯物を干したり、植物の世話をしたりするために、暑い時期に出ることもあるかと思います。涼しい冷房の効いた室内から出て作業する時には、特にこまめな休憩、十分な水分・適度な塩分の補給を忘れないようにしましょう。冷却グッズで首を冷やすことも有効です。
室内熱中症対策チェック
室内熱中症の対策ができているかどうかチェックしてみましょう。
自分が今いる場所でできている対策にチェックをつけてください。
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今自分がいる場所の室温(気温)が分かりますか?
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今自分がいる場所の湿度が分かりますか?
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室内を涼しく風通しの良い環境にしていますか?
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いつでも水分補給できる状態ですか?
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こまめに休憩をとっていますか?
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充分に睡眠をとっていますか?
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1日3食栄養バランスに気を付けて食べていますか?
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運動や入浴で体が暑さに慣れていますか?
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自分も熱中症になるかもしれないと意識していますか?
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家族が熱中症になるかもしれないと意識していますか?
全ての項目に回答してください





すべてのチェックが「はい」となるように対策をしましょう
専門家による解説
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三宅康史先生
臨床教育開発推進機構 理事
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症および低体温症に関する委員会メンバー屋内での熱中症は特に高齢者で多くなっています。高齢者は、基礎代謝が低くなり、暑さ、寒さへの感覚が鈍ってくるため、結果的に長い時間高温多湿の室内で過ごしてしまい、自分でも知らないうちに脱水症状を起こし、熱中症になってしまうことがあります。救急搬送された熱中症患者のうち、65歳以上では屋内での発症が50%(女性は70%)を超えており、他の世代よりも多く発生しています(環境省環境保健マニュアル2018より)。
高齢者に限らず、室内はエアコンなどの冷房器具を使って涼しく保つようにして下さい。高齢者はエアコンがあっても使用していない場合も多く、エアコンを使用していないと熱中症が重症化しやすくなることがわかっています。部屋が暑くなっていることが感覚ではわかりにくい場合もあるので、温度計で室温・湿度を確認した上で、28℃を目安にエアコンのスイッチを入れ、室内環境を快適に保つようにして下さい。
実は夜間も注意が必要です。適切に冷房を使わないと、日中の日差しで蓄えられた熱が壁やベランダから室内に伝わり、外気温が下がっても、室温は高いままという状況も起こります。寝ている間に気付かないまま脱水が進み、熱中症になってしまうこともあるので、暑かった日は寝室に熱がこもらないよう夜間も冷房を使うようにしましょう。
暑い外から帰ってきた時に、日差しにより室内が高温になっている場合には、すぐに窓を開けて換気と同時に冷房のスイッチを入れ、室内と身体をできるだけ早く冷やしましょう。
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熱中症について学ぼう
【監修】
臨床教育開発推進機構 理事
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症および低体温症に関する委員会メンバー
三宅康史 先生