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医師が教える熱中症の基礎知識医師が教える熱中症の基礎知識

三宅康史先生

医師が教える熱中症の基礎知識

帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長
三宅康史先生
■三宅先生のプロフィール
経歴
1985年東京医科歯科大学医学部卒業
役職
日本救急医学会評議員・専門医・指導医、熱中症に関する委員会元委員長
東京オリンピック・パラリンピックコンソーシアム活動対応特別委員会、総務委員会
日本臨床救急医学会評議員
自殺企図者のケアに関する検討委員会委員長
日本外傷学会評議員・専門医
トラウマレジストリー検討委員会委員長
日本脳神経外科学会評議員・専門医
日本集中治療医学会評議員・専門医
日本臨床医学リスクマネージメント学会 理事長
日本交通科学学会 副会長
日本神経救急学会 理事、フェロー
日本自殺予防学会 理事

編著にICU Q&A改訂第2版(羊土社)、ICUハンドブック第2版(中外医学社)、ER診療の実際 上・下巻(医学出版) 、医療者のための熱中症対策Q&A(日本医事新報社)、現場で使う熱中症ポケットマニュアル(中外医学社)、神経外傷ガイドブック(メジカルビュー社)、救命救急・集中治療エキスパートブックR35(日本医事新報社)、PEECガイドブック改訂第2版(へるす出版)、母体救命アドバンスガイドブックJ-MELS(へるす出版) 、熱中症改訂第2版(へるす出版)、神経外傷診療ガイドブック(メジカルビュー社)など
資格
日本救急医学会認定指導医・専門医、日本脳神経外科学会専門医、日本集中治療医学会専門医、日本外傷学会専門医、JATEC/ISLSディレクター・インストラクター、東京DMAT隊員

熱中症はいつから世の中に出だした?熱中症はいつから世の中に出だした?

昔は、強い直射日光に長時間当たることで発生する「日射病」や、屋内外を問わず高温多湿な環境下に長時間いたり作業をしたりした時に起こる「熱射病」と、呼ばれ方が様々でしたが、2000年からすべて「熱中症」に統一しました。軽い方からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と3段階に分けて判断します。
熱射病、日射病という呼び方がなくなったわけではなく、症状ごとに表現を変えなくても総じて呼べる名前として、「熱中症」がよく使われるようになりました。

熱中症発症の理由熱中症発症の理由

熱中症は夏にかかる人が大半です。という事は夏の暑さが大きな原因の一つになっているということです。私達の身体はだいたい36℃台を安定して維持しているのですが、夏、暑くなると身体から熱がうまく逃げなくなります。加えてスポーツや肉体労働をしている人は身体の中にさらに熱を作り出していますので、体温があがった際には基本的には汗をかいたり、身体の表面から熱を空気中に逃がして37℃を超えないように出来ています。例えば汗をかいて乾くときに身体の表面から気化熱を奪うようになっています。また、顔が赤くなるのは顔の表面に血管、血液が拡がってきて身体の表面から熱を外に逃がそうとする為です。そのようにして体温が上がらないように身体は調整されています。

また、肉体労働やスポーツなど普通以上に頑張ってしまうと、身体がどんどんと熱くなり汗をかくと身体の水分が減っていきます。水分が減ると、37℃以下にコントロールされていた身体の体温が徐々にあがってきて、最悪の場合、41℃くらいまで上がることもあります。37℃以下で一番うまく働く脳を含めた重要臓器は、体温が高くなることで機能しづらくなります。また、汗をかくと身体の血液が減ってきて血のめぐりが悪くなってしまいます。以上2点によって身体の調子が悪くなり、熱中症を引き起こします。

熱中症はどのようにして起こるのか

環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」から引用

近年の熱中症発生傾向近年の熱中症発生傾向

2015年~2019年では、熱中症による救急搬送者数の約50%は65歳以上の高齢者でした。発生場所は、住居(敷地内の全ての場所を含む)が最も多く、2017年~2019年では、約40%でした。熱中症の発生傾向を「労作性熱中症」と「非労作性(古典的)熱中症」で比較した場合、下記のような特徴があります。
労作性熱中症 非労作性(古典的)熱中症
年齢 若年~中年 高齢者
性差 圧倒的に男性 男女差なし
発生場所 屋外、炎天下 屋内(熱波で急増)
発症までの時間 数時間以内で急激発症 数日以上かかって徐々に悪化
筋肉運動 あり なし
基礎疾患 なし(健康) あり(心疾患、糖尿病、脳卒中、後遺症、精神疾患、認知症など)
予後 良好 不良
若年~中年にみられることが多い「労作性熱中症」は、数時間以内で急激発症する傾向があり、高齢者にみられることが多い「非労作性(古典的)熱中症」は、数日以上かかって徐々に悪化する傾向があります。スポーツをするなどの筋肉運動時には、高い気温だけでなく、高い湿度だけでも熱中症を発症することがありますが、高齢者の日常生活中には、気温が低ければ湿度が高くても発症する可能性は少ないです。
近年増加傾向にある訪日外国人も、日本の夏が蒸し暑いことや、熱中症の予防・対策法を知らないことにより、救急搬送される方がいます。症状としてはⅠ度やⅡ度の場合が多いですが、年々搬送者数が増えています。
実際に医療現場では、身体が暑さに慣れていない梅雨明け後に気温が急上昇した日や暑さが長く続いた時期に救急搬送者数が増加しています。

熱中症かな?と思ったら熱中症かな?と思ったら

熱中症かな?と思ったら 夏場ご家族や周りの方の体調が悪くなった時は、熱中症かもしれないと疑うことが大切です。まず声をかけてあげて、もし意識がはっきりしていなければ救急車を呼んであげなければいけません。
意識が普通でない場合は脳に症状が出ている場合が高いのですぐ呼んで下さい。意識がある場合は応急処置をして下さい。日が当たらない場所に避難させたり、特に男性はネクタイをしめていたり、ベルトをとめていたりするので、緩めてあげて汗を乾かしやすくしてあげましょう。そしてよく冷やした、お茶やお水を飲ませましょう。冷えていてもアルコールは飲ませてはいけません。
飲ませてあげると言っても、他人が飲ませるとむせたりする可能性があるので、本人に持たせて自分で飲むようにさせて下さい。そのときにしっかりと持てないなどの症状があれば、救急車をすぐに呼んで下さい。また、処置が始まり、症状が良くならない場合も救急車を呼んで下さい。

【監修】
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長 三宅康史 先生