気候変動と熱中症対策気候変動と熱中症対策

予防・対策

近年は人間活動による温室効果ガスの増加などにより地球全体の気温が上昇しています。
今後対策を行っても、ある程度の気温の上昇は避けられないため、私たちは温室効果ガスを減らす緩和策とともに、暑くなる環境への適応策にも取り組む必要があります。
気候変動について知るとともに、熱中症対策についても確認しましょう。

気候変動とは?

「気候」とはその地域において毎年繰り返される気温や降水量などの大気の状態の傾向を指します。
「気候変動」とは、海洋の変動、火山の噴火によるエーロゾル(大気中の微粒子)の増加、太陽活動の変化などの自然要因や、人間活動に伴う二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの増加、森林破壊などの人為的な要因によって、様々な時間スケールで気候が変動することをいいます。
近年は、人為的な要因による世界平均気温の上昇が顕著になり、猛暑や豪雨といった極端な気象現象も増えています。

気候変動とは?

日本における気候変動の影響

気象庁による、1898年から2021年の日本の年平均気温の経年変化をみると、長期的には100年あたり1.28℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。
また、最高気温が35℃以上の猛暑日や最低気温が25℃以上の熱帯夜の日数は増加し、最低気温が0℃未満の冬日は減少しています。

日本における気候変動の影響

雨の降り方も変化していて、日降水量100mm以上の大雨や1時間降水量50mm以上の短時間強雨の発生頻度が増加しています。  

気候の将来予測

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(AR6)によると、世界の平均気温は、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、産業革命以前と比べ1.5℃および2℃上昇するとされています。
気温の上昇に伴い、大雨や短時間強雨の発生頻度の増加、海面水位の上昇、台風の激化、干ばつ・熱波の増加等が起こり、地球規模で自然生態系や人間社会に、深刻な影響が生じると考えられています。
日本では、熱中症や大雨に伴う土砂災害・水害のリスクの増加、高温による米の品質など農作物への影響、水温上昇によるサンマなど水産物への影響、サンゴやライチョウなどの自然生態系への影響などが懸念されています。

気候の将来予測

気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change) 気候変動に関する政府間パネル
(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)とは、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、2021年8月現在、195の国と地域が参加しています。
IPCCの目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることです。世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しています。
現在、第6次評価報告書(AR6)が作成されています。

緩和策と適応策

気候変動の対策には、「緩和策」と「適応策」があります。
温室効果ガスの排出削減や森林など二酸化炭素等の吸収源の増加を図る「緩和策」と、既に生じているあるいは将来予測される気候変動の影響による被害を防止・軽減するために、自然や社会のあり方を調整する「適応策」です。
気候変動の影響を低減するためには、緩和策と適応策を両輪として進める必要があります。

緩和策と適応策

さらに激化する暑さに対応するための熱中症対策

今後さらに暑さが厳しくなり、最高気温が40℃を超える日も珍しくなくなる可能性があります。緩和策、適応策共に、より積極的な対策を取らなければ、暑さによる健康面のリスクが高まります。
そのため、暑さへの適応方法を事前に知っておくことが大切です。熱中症の予防・対策を確認しましょう。また、熱中症の症状や応急処置を知ることも、熱中症の重症化を防ぐために重要です。 

暑くなる前からできること

  • 暑熱順化

    暑熱順化

    暑熱順化とは、体が暑さに慣れることです。
    暑熱順化ができていないと、体の熱をうまく外に逃がすことができず、熱中症になる危険性が高まります。
    暑熱順化ができると、体の外に熱を逃がしやすくなること、汗からナトリウムを失いにくくなること、体温が上昇しにくくなることなどにより、熱中症になりにくい状態になります。

  • 食事と睡眠で丈夫な体づくり

    食事と睡眠で丈夫な体づくり

    バランスの良い食事を3食とり、睡眠環境を整えて十分な睡眠をとりましょう。体調管理をすることで、熱中症にかかりにくい体づくりをすることが大切です。

  • 熱中症を知る

    熱中症を知る

    熱中症は実際にどのような症状が出るのか、どのように予防できるのか、なってしまった時にはどうしたらよいのかといった熱中症に関する知識を持つことで、暑い環境で体調が悪くなった際の対処に役立ちます。
    いつでもどこでもだれでも条件次第で熱中症にかかる可能性があります。自分や身近な人も熱中症になるかもしれないと意識しましょう。

暑くなってからした方が良いこと

  • 暑さに関する情報の確認

    暑さに関する情報の確認

    天気予報や熱中症情報を活用して、今後の暑さを知るとともに、温度計・湿度計・熱中症計を使用して、いま自分のいる環境について気にかけるようにしましょう。
    室温が高い時だけでなく、湿度が高い時も熱中症に注意が必要です。風を起こす、冷却グッズ、冷房機器や除湿器を使用するなど、快適な環境を保つようにしましょう。
    公共施設やショッピングモールなどで涼み、クールシェアするのも良いでしょう。

  • 水分と塩分の補給

    水分と塩分の補給

    のどがかわいていなくても、こまめに水分をとりましょう。マイボトルを持ち歩くのもおすすめです。
    運動や屋外作業などで汗を大量にかいた時は、適度な塩分補給も重要です。

  • 衣服の工夫

    衣服の工夫

    体に熱がこもらないように衣服を着用しましょう。
    綿や麻など通気性の良い素材や、吸水性や速乾性に優れた素材がおすすめです。ゆったりとした服装にすると、衣服の中や体の表面に風が通って、涼しく感じられます。
    日差しのある場所では、熱を吸収しやすい黒い色の素材は避けた方が良いでしょう。

  • 熱や日差しから体を守る

    熱や日差しから体を守る

    ぼうしや日傘を活用して、できるだけ直射日光を浴びないようにしましょう。日傘をさすことができない場合は、つばの広い帽子をかぶったり、首にタオルを巻いたりすることでも日差しをよけることができます。
    また、日かげを選んで歩いたり、日かげで活動したりするのも良いでしょう。

  • 室内を快適に保つ

    様々な方法で室内を快適に保つことが大切です。
    冷房機器の使用も必要ですが、エネルギーを使わずに冷却する(パッシブクーリング)も取り入れると良いでしょう。
    ひさし、すだれやよしず、シェード、植栽、壁面緑化で外からの熱を遮ることや、保水性の高い素材や水滴を活用したパネル・ルーバーで蒸発冷却をする方法もあります。
    断熱性能の高い家づくりも大切です。 

  • 家事をしている時も注意

    家事をしている時も注意

    キッチンで火を使って調理すると、熱とともに蒸気による湿気が発生して高温多湿の環境が生まれるため、注意が必要です。夏場はできるだけ火を使わない調理方法に切り替えるなど工夫してみてください。
    また、廊下や脱衣所・洗面所などの冷房の効いていない場所や、トイレなどの狭い場所、お風呂などの湿度の高くなりやすい場所では、他の部屋に比べて高温多湿になりやすいため、注意するようにしてください。

  • 熱中症弱者を守る

    熱中症弱者を守る

    高齢者や子ども、持病がある人、体調不良の人などは、熱中症に特に注意が必要です。
    そのような人が周りにいる場合、熱中症になりやすいことを意識し、気にかけるようにしてください。

こちらもチェック!

年代、活動レベル、場所の入力で、今いる環境の熱中症リスクを算出し、それぞれの場面に応じた水分摂取や休憩の目安を提案します。

今後大雨や短時間強雨の発生頻度が増えることも予想されています。暑い時期に大雨災害が起きた時のために、災害時の熱中症対策も確認しておきましょう。

社会全体で行う気候変動対策

気候変動の悪影響を最小限に抑え、持続可能な社会を維持するためには、熱中症対策をはじめとする個人でできる気候変動への対応だけでなく、社会全体での緩和策、適応策が大切です。
ビジネス・商業エリア、自然エリアでの再生可能エネルギー発電、公共施設・商業施設・オフィスビルの断熱性・エネルギー効率向上、都市全体でのヒートアイランド対策、熱中症リスクが高まるタイミングの予測と情報発信など、行政、研究機関、企業、個人が一体となって対策を進める必要があります。

熱中症対策だけでなく、気候変動影響を低減するための緩和策、適応策を実行してみましょう。