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熱ゼロ研究レポート:真夏の室内環境変化に関する観測調査熱ゼロ研究レポート:真夏の室内環境変化に関する観測調査

レポート No.12真夏の室内環境変化に関する観測調査

「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム
真夏の室内環境変化に関する観測調査

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、夏の室内での温度変化や冷房の効果、キッチンで火を使った場合の環境変化を調査するため、サーモカメラによる撮影、およびWBGTの測定を行いました。熱中症は屋外だけでなく、室内にいても条件次第ではかかる可能性があります。室内における環境変化の様子を知り、注意すべきポイントや必要な対策を改めて確認しましょう。

サマリー

  • ■猛暑日において、暑さ対策をしない室内の温度は日中34.5℃を観測、WBGTランクは厳重警戒と熱中症を引き起こす危険性が高い環境に。
  • ■エアコン・サーキュレーターをつけて1時間後の室内のWBGTは28.6℃→24.4℃と厳重警戒から2ランク下がり、注意ランクに下降。冷房機器の使用が熱中症の対策に繋がると考えられる。
  • ■キッチンなど、温度・湿度の上がりやすい環境では、特に熱中症に注意が必要。

■観測概要
日時:
2021年8月5日(木) 14:00~16:00頃
場所:
東京都内 木造2階建て家屋
和室(2階・南向き)、洋室(2階・南向き)、キッチン(2階・西向き)
天候:
晴れ、最高気温 36.5℃(最寄りの観測地点八王子にて13:58観測)
観測項目:
サーモカメラ画像、WBGT
観測内容:
①暑さ対策なし条件下での室内環境変化(和室・洋室)
②エアコン、サーキュレーター稼時時の室内環境変化(洋室)
③調理中の環境変化(キッチン)
観測概要説明画像

暑さ対策を行わない室内の温度状況は…?

エアコンやサーキュレーターなどを使わず、暑さ対策を全く行わなかった14:00頃の和室(左)、洋室(右)の様子です。室内全体が暑くなり、室温はどちらも34.5℃を観測しました。またWBGTは和室で29℃、洋室で29.4℃と、どちらも厳重警戒ランクとなりました。日中は窓から差し込む日ざしの影響も受けて、窓際床の表面温度は2部屋共に36℃前後まで上昇、洋室ではカーテン上部の隙間から熱が入り込む様子もうかがえます。
  • 暑さ対策を全く行わなかった14:00頃の和室
  • 暑さ対策を全く行わなかった14:00頃の洋室

ポイント

  • ・室内にいても、自分のいる環境次第では熱中症にかかる危険性があります。
    温湿度計や熱中症計などの温度やWBGTを測れるアイテムを置き、客観的に周りの環境を確認できるようにしましょう。

  • ・室温は日当たりなどでも変化します。過ごす部屋の窓の方角にも注意を向けましょう。また、日が当たる窓際が熱くなることもあります。

エアコン稼働+サーキュレーター活用で部屋全体を涼しく

それでは、冷房機器を使って暑さ対策を行うと室内環境はどのように変化するでしょうか。本観測では洋室のみエアコン、サーキュレーターの順で機器を稼働させ、部屋が涼しくなる様子をサーモカメラで撮影しました。また、暑さ対策を行っていない和室とWBGTを比較し、室内における熱中症危険度の変化について記録しました。結果の詳細についてはこちらをご覧ください。

  • 観測時間:15:00~16:00
  • 記録間隔:10分毎
  • エアコン設定:28℃、自動運転
  • サーキュレーター設定:風量弱、エアコンに背を向けて設置

■サーモカメラで見る温度分布


観測開始15:00頃のWBGTは、洋室28.6℃、和室29.2℃と、いずれも14:00に引き続き厳重警戒ランク、熱中症危険度の高い状態でした。初期状態の洋室(左図)を撮影後、エアコンをつけて20分後の画像が右図です。部屋の下部分から冷え始め、壁や床も徐々に温度が低くなっています。
  • 初期状態の洋室
    初期状態の洋室
  • エアコンをつけて20分後の洋室
    エアコンをつけて20分後の洋室
観測中盤からはサーキュレータを稼働させ、部屋の空気を循環させるようにしました。15:30から観測終了の16:00にかけてエアコンの設定温度28℃に近しい値まで、部屋全体の表面温度が下がっていく様子が見られます。
  • エアコンをつけて30分、サーキュレータをつけて10分後の洋室
    エアコンをつけて30分、サーキュレータをつけて10分後の洋室
  • エアコンをつけて60分、サーキュレータをつけて40分後の洋室
    エアコンをつけて60分、サーキュレータをつけて40分後の洋室

■WBGTの推移

ここで、暑さ対策なしの和室とWBGTの推移を比較します。和室では、観測終了の16:00でWBGTが28.9℃と、開始前の値とほとんど変わらず1時間を通して厳重警戒となりました。一方、同じ南向き・2階でも、対策を行った洋室ではWBGTが24.4℃と厳重警戒から2ランク下がり、注意ランクまで落ち着きました。
WBGT(暑さ対策有無の比較)
サーモカメラ画像や、WBGTが開始から終了まで洋室では下がり続けた様子から、暑い室内を素早く冷却し、身の回りの環境を涼しく保つためには冷房機器の活用が重要なポイントと見られます。


■熱中症にかかりにくい環境で快適に過ごすために

エアコンの冷気は苦手、体の冷えが心配という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特に高齢者の方は温度に対する感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいといわれています。
加齢のよる感覚の変化
「多少暑くても我慢できる」また「肌感覚として、それほど暑さを感じない」といった場合でも、温湿度計や熱中症計で客観的に温度や湿度、WBGTを確認し、自分がいる環境を涼しくしておくことが大切です。冷えが気になる時は、部屋の中で過ごす場所を変えたり、エアコンの風向きを調節したり、風が直接当たらないように工夫してみましょう。
予防・対策のために
また間取りや家具の配置、日当たりなどによっては部屋の温度ムラが生まれ、必ずしも「エアンの設定温度」=「室内温度」とはならないことにも注意が必要です。部屋の温度が均一になるようにサーキュレーターや扇風機を併せて活用してみましょう。

ポイント

  • ・冷房機器を使用して、室温を適度に下げることが大切です。冷えなどが気になる場合は、エアコンの設定を変更する、過ごす場所を変える、部屋の温度が均一になるように工夫して、熱中症になりにくい環境を維持してみましょう。

番外編:調理中のキッチンでも暑さに注意!

高温多湿になりやすいキッチンも熱中症に特に注意が必要な場所の一つ。西日の入りこむ夕方16:00頃、3口コンロ全てで鍋の水を沸騰させた際の温度変化の様子を撮影しました。


■サーモカメラで見る温度分布

鍋を火にかけておよそ5分後の16:10(左図)と、およそ20分後の16:25(右図)のコンロ周りの様子です。16:25の段階では、普段の調理工程を再現し、鍋のふたも開け、換気扇も回している状態です。時間が経つにつれ熱の範囲が広り、換気扇付近にかけて暑くなっている様子がうかがえます。また画像右側の窓から西日も入り込み、キッチン全体が暑くなっています。
  • 鍋を火にかけておよそ5分後
  • 鍋を火にかけておよそ20分後

■WBGTの推移

鍋に火をかけた後から、キッチン内でのWBGTは上昇し、観測時間内での最高は、16:23、16:24時点の28.6℃の厳重警戒ランクでした。間取り図に示すように、洋室と一体になったカウンターキッチンでの観測でしたが、部屋でエアコンがついていてもキッチンなどの温度や湿度が上がりやすい作業を伴う環境では、特に注意しましょう。
WBGT(キッチン)

ポイント

  • ・キッチンで火を使って調理すると、熱とともに蒸気による湿気が発生して、高温多湿の環境が生まれるため注意が必要です。夏場はできるだけ火を使わない調理方法に切り替えるなど工夫してみてください。

  • ・キッチンの他にも冷房の効いていない場所(洗面所、お風呂、トイレなど)は高温多湿になりやすいので注意しましょう。

室内サーモンカメラ観測まとめ

専門家による解説

三宅康史先生
三宅康史先生
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長
屋内での熱中症は特に高齢者で多くなっています。高齢者は、基礎代謝が低くなり、暑さ、寒さへの感覚が鈍ってくるため、結果的に長い時間高温多湿の室内で過ごしてしまい、自分でも知らないうちに脱水症状を起こし、熱中症になってしまうことがあります。
高齢者に限らず、室内はエアコンなどの冷房器具を使って涼しく保つようにしてください。部屋が暑くなっていることが感覚ではわかりにくい場合もあるので、温湿度計で室温・湿度を確認した上で、室内環境を快適に維持しましょう。体の冷えなどが気になる場合には、冷風が直接当たらないように場所を変えたり、エアコンの風向きを調節したり、扇風機やサーキュレーターと併用して過ごし方を工夫してみることも大切です。ご家族の中に高齢の方がいる時は、体調の変化を我慢していないか、室内の温度は適切であるか、など周りの人がこまめに気にかけ、予防対策を促してあげましょう。
また、新しい生活様式での感染症対策として、室内を換気するため、エアコン使用中もこまめに窓を開けているという方が多いかと思います。換気した後は、室内の温度が高くなりがちですので、エアコンの設定温度を下げるなどの調整をしてください。
キッチンのように温度・湿度の上がりやすい環境では別途注意が必要です。エアコンをつけていても、火を使って調理する際や、熱ととも蒸気が上がる場合には、特に暑くなることがあります。調理に集中していると、身の回りの暑さに気が付きにくいかもしれません。意識的に温度・湿度を確認するだけでなく、適度な水分・塩分補給を行うなど、こまめな対策が必要です。