みんなの力で熱中症をゼロにしよう

熱ゼロ研究室:日差しを遮るシェードの効果は?

  • PR熊谷市の保育所における暑さ対策
    観測レポート

    「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム

埼玉県熊谷市では、2018年7月23日(月)14時16分に気温が41.1°Cまで上がり、全国の観測史上1位の気温を記録し、日本一暑い街となりました。(2018年8月30日現在)
熊谷市では、2007年に当時の最高気温を計測したことを契機に、暑さ対策日本一を目指す取り組みを継続して行っています。2017年には、市内の保育所の外廊下や通路に直射日光を遮るスタイルシェードを設置するなどの対策を行いました。
今回、熱ゼロ研究室では、熊谷市の保育所4カ所で暑さ対策として行われているスタイルシェードの効果を観測によるデータから見ていきます。

サマリー

  • ■暑さ対策の結果、直射日光のあたる園庭よりも、スタイルシェード+遮熱塗料(熱交換塗料)のある外廊下では表面温度が20℃以上、気温は4℃以上低くなっていた。
  • ■熱中症の予防には、涼しい環境づくりが大切。直射日光を防ぐことは、地面からの照り返しによる輻射熱の影響を減らし、熱中症の予防につながると考えられる。

暑さと子どもの熱中症

■低い場所の気温

気温が高くなると、地面近くは気温で表される数値より暑くなることがあります。
環境省が発行する「熱中症環境保健マニュアル2018」では、通常気温は150cmの高さで測るが、東京都心で気温が32.3℃だったとき、幼児の身長である50cmの高さでは35℃を超えること、さらに地面に近い5cmは36℃以上であり、大人が暑いと感じているときは、幼児はさらに高温の環境にいることになると報告されています。

■気温と輻射熱

このように、地面に近くなるほど暑くなるのはなぜでしょうか?
実は人が感じる暑さには、気温、湿度、気流だけでなく、太陽光や地面からの照り返しなどの輻射熱も関係します。
通常、気象情報で示される「気温」は地上1.5mの位置で直射日光に当たらないように、観測されているため、輻射熱の影響は地面の近くよりも少ない環境であると考えられます。

■表面温度の変化と感じる暑さ

直射日光などにより、地面が高温になると、地面から体中に受ける輻射熱による影響も大きくなります。
表面温度が異なると、受ける輻射熱も異なります。例えば図のように、表面温度のみ40℃と60℃で異なる一様な面で、気温・日射が等しく一定で変化がなく、風がともにほとんどない(0.5m/s)空間を仮定した場合、高さ1mの簡易体感温度はおよそ2.7℃異なります(*1)。
実際の屋外では、表面温度以外にも気温、日射、湿度が変化するため、気温が上がったり、直射日光が当たったり、湿度が高くなったりすることで、今回の計算値よりも暑く感じることがあります。
*1 環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン 簡易体感温度の計算方法について」より算出

温められて輻射熱が強くなりやすい直射日光の下で、子どもが長い時間活動や滞在を行うことは熱中症の危険度を上げることになり、大変危険です。環境によっては日陰でも熱中症の危険度が高くなる場合もありますので、子どもの外出の際には十分注意しましょう。

■子どもの熱中症

子どもは以下の理由により、大人よりも熱中症にかかりやすいと言われています。
・(乳幼児の場合)体温調節機能が十分に発達していない
・遊びに夢中になるとのどの渇きや気分の悪さなどの熱中症のサインに気づきにくい
・暑さや体の不調を、まだ自分の言葉で十分に訴えることができない

そのため、子どもの熱中症予防には、周りにいる大人が見守り、様子を気にかけることが必要不可欠です。


ポイント

地面に近い子どもたちは、地面の熱さを受けて大人よりも暑い環境にいます。
子どもは、大人よりも熱中症になる危険度が高いため、周囲の見守りで子どもを熱中症から守ることが必要です。

熊谷市の暑さ対策

夏、厳しい暑さとなる熊谷市では、2012年から市内の保育所で直射日光の当たるコンクリートテラス(外廊下等)が暑くなりすぎないよう、表面の温度上昇を抑えることができる遮熱塗料の1つ、熱交換塗料を塗って対策をしています。また、2017年には株式会社LIXILの外付け日よけ「スタイルシェード」を設置し、暑さ対策を行っています。
さらに、夏の日差しによって土の園庭がとても熱くなるため、夏の期間中、園庭での外遊びは原則行わず、例外として保育所ごとに暑さや日差しの対策を行った上で、プールのみを実施しています。

暑さ対策の効果を実感

Q暑さ対策の効果をどんなところで実感していますか?

A

遮熱塗料(熱交換塗料)が塗られたことで、普通のコンクリートよりも熱くなりにくく、裸足でも歩けるほどになりましたが、まだ直射日光が当たる場所はとても暑くなっていました。しかし、昨年にはスタイルシェードが設置され、直射日光を防ぐこともできるようになり、より涼しくなりました。

Qどういったときにスタイルシェードの効果を感じますか?

A

子どもたちが靴を脱ぎ履きする場所に対策が行われたおかげで、靴の脱ぎ履きに時間がかかる子どもたちのいる場所が熱くなりにくく、スタイルシェードで子どもたちを守ることができるようになり、安心しています。
廊下が日陰になったことで、室内まで涼しく、冷房の効きが良くなったように思います。


ポイント

スタイルシェードによって、保育所では涼しさを感じているとのこと!
環境を涼しくすることは熱中症対策の大切なポイントです。

データから見るスタイルシェードの効果

「熱中症ゼロへ」プロジェクトチームでは、7/14(土)と7/21(土)に熊谷市の4カ所の保育所で観測を行いました。観測結果の詳細はこちらをご覧ください。

■銀座保育所での観測結果

ここでは観測を行った4カ所の保育所うちの1カ所、銀座保育所について結果を見ていきます。
銀座保育所での観測は下記条件で、下図の①②③の場所に熱中症計を置いて観測を行いました。

■観測条件と観測項目

①スタイルシェードのある外廊下(遮熱塗料あり):1日中日差しが遮られる外廊下
②スタイルシェードのない外廊下(遮熱塗料あり):午前中は日の当たる外廊下
③園庭:1日中日の当たる土の上
以上の3条件で、WBGT、気温、湿度、表面温度を計測しました。

WBGT、気温、湿度は地上70cmに熱中症計を固定して測定し、表面温度は放射温度計で測定しました。

銀座保育所で観測を行った7/21(土)は、熊谷で最高気温は38°C、昼の天気は薄曇一時晴となっており(気象庁観測)、保育所での観測中は日差しが出たり、雲で日差しが遮られたりを繰り返していました。

■WBGT

WBGTはグラフのように、9:00から15:30までの間は31℃以上となっていました。環境省が活用しているWBGT基準(*2)の根拠の1つである「日常生活に関する指針」(*3)では、WBGT31℃以上は「危険」に分類され、「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」ことを推奨しています。
観測の結果、WBGTについては、条件間で大きな差はありませんでしたが、最も高いWBGTは12:00に園庭で観測されました。

*2 環境省「WBGTとは? 日常生活に関する指針」より
*3 日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)より

■気温

気温は園庭で14:00に最も高い41.4°Cを記録しました。この時、スタイルシェードのある外廊下では、36.8°Cとなっており、園庭に比べ4.6°C低くなっていました。

銀座保育所では「スタイルシェードのない廊下」の日差しが当たるのが午前中のみとなっていたため、表面温度については「スタイルシェードのない廊下」でも一日中、日差しが当たっていた籠原保育所のデータを見てみます。

■暑さ対策と表面温度

一日中日差しの当たっている場所(籠原保育所)で表面温度を比べると、14:00に「園庭」で58.3℃、「スタイルシェードのない廊下」で48.0℃、「スタイルシェードのある廊下」で35.7℃と、それぞれ約10℃ずつ異なっていました。「スタイルシェードのない廊下」も「スタイルシェードのある廊下」も遮熱塗料(熱交換塗料)は塗られていたため、遮熱塗料は普通の地面よりも約10℃表面温度を下げる効果があり、さらにスタイルシェードがあるとそれよりも約10℃表面温度が下がるということがわかりました。

■園庭との比較

WBGT、気温、湿度について、園庭とスタイルシェードあり・なしを比較してみます。14:00の観測データより、気温では、スタイルシェードありが園庭に比べて-4.6℃、表面温度では-22.6℃となっていました。特に表面温度は、スタイルシェードがあることで、直射日光の当たる園庭やスタイルシェードなしの外廊下よりも大幅に温度の上昇を抑えることができていました。

ポイント

  • ・WBGTについてはどの場所でも、環境省の「日常生活に関する指針」で「厳重警戒」から「危険」となる30℃から34℃となっていました。特に暑い日は外に出ることそれ自体が危険な場合が多くあります。できる限り涼しい屋内で過ごすようにしましょう。
  • ・「スタイルシェードのある廊下」では、「園庭」よりも、気温が約4°C、表面温度が約20°C低くなっていました。触った感覚も大きな違いがあり、体感としても涼しく感じられました。

専門家による解説

三宅康史先生

三宅康史先生
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会委員長

保育園に通うぐらいの幼児が熱中症に気をつけなければいけないのは、身体が小さい分、大人より早く体温が上昇してしまうこと、発汗する能力が未熟で汗の蒸発ではなく、からだの表面からの放熱により身体を冷やすため、湿度より気温の影響を受けやすいことなどです。このほか、背が低いので地面の照り返し(輻射熱)を受けやすいこと、などがあり、熱中症の危険度が高まります。
熱中症の予防と治療の原則は、こまめな水分補給と涼しい環境作りです。屋外では、風通しを良くすると共に、日陰に入る、日傘や帽子を利用して直射日光を避けることも大切です。直射日光を遮ることで、身体に浴びる日光による体温上昇を抑えることができるだけでなく、床面の温度上昇を抑えて足裏や手掌から直接伝わる体温上昇を抑えたり、しゃがんで遊ぶ子どもの熱中症対策には地面からの照り返し(輻射熱)も防ぐことが有効です。

保育士の先生方の声

41.1°Cを記録した日の、保育士の先生方の感想を聞きました。

  • ・熊谷では猛暑日が続きましたが、スタイルシェードがあったことで、通常よりも涼しく過ごすことができ、子どもの安全にもつながっていると思います。
  • ・レースカーテンの部屋と、スタイルシェードを下ろした部屋では日差しの遮り方が全く違い、窓辺の体感温度がかなり違いました。スタイルシェードによって室内の温度もかなり違ったと思います。
  • ・41.1°Cを記録した日はさすがにスタイルシェード内も暑くなっていましたが、普段は強い日光や紫外線から子どもたちを守ることができ、夏のプール遊びの着替えや秋の運動会の日陰として、様々活用しています。
  • ・スタイルシェードは、内側から外の様子がわかるため、防犯対策にもなりますし、子どもたちにとっても圧迫感がなく、安心して過ごすことができています。

観測でわかったこと

  • 何もしていない地面(園庭)よりも、スタイルシェードのある廊下(遮熱塗料あり)では表面温度が20°C以上、気温は4°C以上低くなっていた。
  • 直射日光を遮ることは熱中症対策の重要なポイント。自分のいる環境を涼しくすることで、熱中症を予防しよう!

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、今後も子どもたちの熱中症予防について調査・情報発信を続けていきます。