熱ゼロ研究レポート:「スポーツ観戦時の熱中症」に関する調査
レポート No.11熱中症になったことがある人に聞いた
「スポーツ観戦時の熱中症」に関する調査
「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム
「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、スポーツ観戦時の熱中症の状況を捉え、適切でわかりやすい啓発を行うことを目的に、「スポーツ観戦時の熱中症」に関する調査を実施しました。本調査は2017~2019年の夏季(5~9月)にスポーツ観戦で熱中症になったことがある人137人を対象に行いました。
サマリー
- ■ スポーツ観戦時に熱中症になった人の90%が屋外観戦で、このうち25%は日差しを遮る屋根のある屋外
- ■ 観戦中に熱中症になった人が多いものの、観戦後も要注意
- ■ 熱中症になった時の観戦時期は、7割以上が7〜8月に集中している
- ■ スポーツ観戦に現れた熱中症の症状として最も多いのは、「めまいや顔のほてり」で67%、次いで「体のだるさや吐き気」が60%
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の夏季スポーツ観戦経験者
サンプル数:137人
調査時期:2019年12月
- ※熱中症という自覚がなく、熱中症の症状のあった人についても調査の対象とするため、調査内では「熱中症」という言葉ではなく、「暑さに起因する体調不良」という表現を使用しています。(下記報告内では「暑さに起因する体調不良」として尋ねた部分を「熱中症」としています)
- ※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。
- ※調査結果(4)のみ、スポーツ観戦以外で熱中症になったことがある人(n=318)も追加して集計しています。
調査結果(1) スポーツ観戦時に熱中症になった人の観戦場所
スポーツ観戦時に熱中症になった人の90%が屋外観戦で、このうち25%は日差しを遮る屋根のある屋外
2017~2019年の夏季(5~9月)にスポーツ観戦で熱中症になった人の、90%が屋外での観戦でした。
熱中症になった人の65%が屋根のない日差しの入る屋外で観戦し、屋根があって日差しが遮られている場所で観戦していた人も25%を占めました。屋外でのスポーツ観戦時は、屋根があって日差しの遮られる場所でも、十分な熱中症対策が必要といえるでしょう。
また、屋内の空調設備のある場所でも熱中症になっている人もいることから、屋内で空調があっても注意が必要です。
医師 三宅先生のワンポイントアドバイス
やはり屋外で日差しのあるところが最も多いのは納得できます。帽子や十分な水分を持参するなど、暑さに備えて出掛けましょう。調査結果(2) スポーツ観戦時に熱中症になったタイミング
観戦中が一番多いものの、帰宅中や帰宅後に熱中症になった人も3割
年代別に見ると、観戦後に熱中症になった人は50代で36%、60代で56%
熱中症になったタイミングは、観戦中が最も多く全体の62%となりました。
しかし、観戦後の帰宅中や帰宅後にも29%の人が熱中症になっており、観戦中だけでなく観戦後にも注意を向けることが大切です。
また、年代別で熱中症になったタイミングを見ると、「帰宅中」と「自宅到着後」を合わせた、観戦後に熱中症になった人は50代で36%、60代で56%となっており、50代以上では特に、観戦後の体調にも注意が必要です。
医師 三宅先生のワンポイントアドバイス
暑い中でのスポーツ観戦は、前もって体調を整えてから出掛けましょう。二日酔いや寝不足、過労は危険です。年齢が高いと観戦後にも体調不良を訴える人が増えています。体力や暑さへの慣れ、場合によってはアルコールの影響があるかもしれませんので、観戦中のビールの飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。調査結果(3) スポーツ観戦時に熱中症になった時期・時間帯・天気
熱中症になった観戦は7割以上が7~8月
熱中症になった際の観戦の時間帯は6割近くが12時~15時だが、朝(6時~9時)や夜(18時~21時)も2割超
観戦時の天気は晴れた日が多いものの、「曇」や「雨」も2~3割ほど
熱中症になったスポーツ観戦の時期は8月が最も多く46%、次いで7月で25%。7月8月の盛夏のスポーツ観戦時には特に熱中症への注意が必要です。
また、5月でも8%、6月でも12%の人が熱中症になっているため、体が暑さになれていない時期のスポーツ観戦についても、十分気を付けてください。
医師 三宅先生のワンポイントアドバイス
盛夏の場合、体が暑さになれていても厳しい環境により熱中症を誘発する可能性があります。 天気が曇っていても、気温や湿度が高かったり、風が弱い日は注意しましょう。 朝や夜の観戦時も前日までの体調やその日の疲労に注意する必要があります。調査結果(4) スポーツ観戦時に多く見られる熱中症の症状
症状として最も多いのは「めまいや顔のほてり」で67%、次いで「体のだるさや吐き気」が60%
スポーツ観戦時の熱中症の症状では、「筋肉痛や筋肉のけいれん」「手足のしびれ」などの症状がスポーツ観戦以外で熱中症になった時よりも多い
ここでは、スポーツ観戦時に熱中症になったことがある人(n=136)と、スポーツ観戦以外で熱中症になったことがある人(n=318)の症状を比較します。
スポーツ観戦時の熱中症の症状として最も多いのは「めまいや顔のほてり」で67%、次いで「体のだるさや吐き気」の60%となっていました。
熱中症の症状にどのようなものがあるかを事前に知っておき、少しでも体調に異常を感じた時は涼しいところで休んだり、水分と適度な塩分を補給したりするようにしましょう。自分だけでなく、周りの人も様子がおかしいと感じた場合には、声をかけるようにしてください。
医師 三宅先生のワンポイントアドバイス
軽症の症状として、めまい、ほてり、手足の痙攣、しびれ、体温が高い、中等症として、だるさ、吐き気、下痢、ひきつけ、まっすぐ歩けない、呼びかけに反応しない、があります。特徴的な症状ではなく、重症度の違いです。しかし、中等症以上の症状のヒトが結構いるのは驚きです。どの症状をとってみてもスポーツ観戦の方が数が多いこと、ひきつけ、まっすぐ歩けない、呼びかけに反応しないといった重症な症状が、数は少ないけれども割合が圧倒的に高いことがポイントです。事前の予防、そして何か起こったときの対策を知っていることが重要でしょう。コラム:スポーツ観戦時の水分補給量
スポーツ観戦時に熱中症になった人の水分補給量として最も多いのは501ml~1000mlでした。医師 三宅先生のワンポイントアドバイス
必要水分量はヒトによって異なります。いつでも冷えた水分(ビールではない!!)にアクセスできるよう、前もって大きめの魔法瓶タイプの水筒に大量の氷を入れて、スポーツ観戦に行くよう心がけておきましょう。専門家による解説
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長
屋外での真夏、炎天下のスポーツ観戦は、十分に体調を整えて、飲物や服装の暑さ対策をシッカリして、気合いを入れて楽しみましょう。応援に夢中になりすぎて、水分補給や一休みを忘れないように。症状はなんでもいいのです。暑い中での体調不良はすべて熱中症を疑い、すぐに涼しいところへ逃げ込んで身体を冷やし、水分補給してください。自分のことばかりでなく、一緒に来たヒトや周囲のヒトで体調が悪そうなヒトを見つけたら、積極的に声を掛け、大丈夫か尋ねてください。早め早めの対処が、熱中症を重症化させずに済みます。
熱中症にならないよう十分準備して、観戦中は少し気を配ることで、終了後も体調くずさず楽しかったイベントの余韻にゆったりとふけることができる様にしたいモノです。
スポーツ観戦時の熱中症対策コンテンツ
暑い時期のスポーツ観戦は特に注意が必要です。観戦日当日の熱中症情報や予防・対策法などを事前にチェックしてからスポーツ観戦を楽しみましょう。