熱ゼロ研究レポート:学校における黒球付熱中症計の活用調査
レポート No.9学校における黒球付熱中症計の活用調査
「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、部活動や校外学習など熱中症のリスクを伴うことがある「学校現場」での熱中症予防の強化を目的として、2019年春夏、黒球付熱中症計を全国の小学校・中学校・高等学校にプレゼントするキャンペーンを実施しました。キャンペーンの寄贈品である黒球付熱中症計の学校での活用の様子をご紹介します。
サマリー
- ■ キャンペーンに応募した全国の小中高校へ黒球付熱中症計を寄贈。
- ■ 黒球付熱中症計の活用により教員、児童・生徒ともに熱中症対策意識が向上し、行動変化があった。
- ■ アンケートに加え実際にヒアリングした学校10校においては、暑さによる体調不良者が減少し、医療機関での処置を必要とするような生徒は一人もいなかった。
- ■ 黒球付熱中症計の設置は、視覚的に児童や生徒の関心を引き、今いる場所の環境の数値を可視化させたことで、行動・意識変化に繋がったと考えられる。
黒球付熱中症計寄贈キャンペーンの実施
■学校現場における熱中症リスク
学校生活では、体育の授業や部活動の他、遠足や登山などの校外学習でも熱中症にかかる可能性があります。独立行政法人日本スポーツ振興センターによれば、学校での熱中症は、部活動の場面で最も発生割合が高く、2017年は全体の6割以上が部活動場面での発生となっていました。(「熱中症ゼロへ」関連ニュース:学校での熱中症発生割合、課外指導が65%を占める ~学校生活での熱中症対策情報シリーズ 4月号~もご参照ください)
■黒球付熱中症計寄贈キャンペーン
「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、2019年春夏、熱中症リスクに気づき、自主的に熱中症の予防・対策ができるようになることを推進していくために、黒球付熱中症計を全国小学校・中学校・高等学校にプレゼントするキャンペーンを実施しました。その後、寄贈した62校へ黒球付熱中症計の活用方法や工夫、シーズンを通しての行動、意識などの変化を把握するためのアンケート調査やヒアリングを行いました。
熱中症計とは?
【※】暑さ指数(WBGT):
人の身体と外気の熱のやりとり(熱収支)に与える影響の大きい「気温」「湿度」「日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境」を取り入れた指標。
学校現場における黒球付熱中症計の使用状況
■様々な場面・場所での設置
黒球付熱中症計の活用場面は体育の授業が最も多く、体育祭や球技大会など学校行事と重なったところでも多く活用されていました。■各校の取り組み
ポイント
- ・学校現場での黒球付熱中症計の活用は生徒全員がかかわる授業(体育)が最も多い。
- ・中学校・高等学校では教員だけでなく生徒も熱中症予防対策に積極的。
黒球付熱中症計設置による効果
黒球付熱中症計の設置によって、教員・児童・生徒共に対策意識が向上し、行動にも変化がありました。測定により熱中症予防につながったと感じている学校は97%(とてもそう思う58%、ややそう思う39%)とほとんどの学校が黒球付熱中症計の設置による効果を感じていました。
実際にヒアリングした10校の学校においては、体調不良で保健室に行く学生が減り、医療機関での処置を必要とするようなケースはありませんでした。
〇実際に使用した学校の声
校庭で測定した危険度ランクを、児童にもわかりやすいように、昇降口前に掲示し、熱中症予防への呼びかけを行いました。児童は休み時間、外に遊びに行く前に、熱中症の危険度ランクを確認していました。
夏休み中の駅伝練習、開始前に保健体育委員が黒球付熱中症計にて計測、記録しました。体感的にも限界かと思うとき、数値ではっきりと危険が出ると運動を中止しやすかったです。人目に触れさせることで、多くの人が気づくため、熱中症予防の意識付けになりました。
容易に持ち運びできるよう、熱中症計を三角コーンに取り付け、生徒が主に活動する場所に設置しました。各数値やランクが一目で分かるため、生徒、職員共にそれを意識し、数値やランクに応じて、熱中症予防を意識した行動(水分摂取や休憩の取り方等)をとる様子が見られました。
ポイント
- ・黒球付熱中症計の設置で対策意識向上、行動変化が見られた。
- ・置き場所や表示方法で、数値やランクが目を引くことも、対策意識の向上につながると考えられる。
今後も「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、学校の授業や課外活動での熱中症危険度への気づきと自主的な対策アクションを促す啓発活動を推進していくとともに、黒球付熱中症計の全国の学校現場における普及・活用を目指していきます。