熱ゼロ研究レポート:屋外での作業、ファン付きウェアの効果は?
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PR屋外作業現場での実験レポート
「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム
ファン付きウェアの効果は?
夏の強い日差しが照りつける中、屋外で長い時間活動を続けると、熱中症の危険度が非常に高くなります。また、日差しが少なくても、湿度が高い日は、汗が蒸発しにくく身体に熱がこもりやすいため、熱中症の危険にさらされます。
建設業や製造業などに携わる方は、屋外・屋内を問わずこうした暑熱環境下で働くことが多いため、熱中症に注意が必要です。重い工具や保護服を身にまとうなど厳しい条件下では、より一層の熱中症の予防・対策が求められていると言えるでしょう。
今回、熱ゼロ研究レポートでは、屋外環境で作業する人の衣服内気温や相対湿度、快適感などがどのように変化するかを調べました。その際、作業現場での暑さ対策アイテムとして浸透しているファン付きウェア(以降、空調服)を着用し、その効果を検証してみました。
調査サマリー
- ■空調服を着用した人の方が、衣服内の水蒸気密度が小さい状態に保たれ、より暑さを感じにくい状態で作業できた。
- ■衣服内の気温が一定でも、衣服内の水蒸気密度が大きいと不快感に繋がりやすくなる。
(*掲載している実験結果は、WBGT値が約25~26°Cの環境下で取得されたものです。)
建設業などの労働環境下における熱中症予防対策
まず、職場における熱中症予防対策として、次の4つの方法があります。
・作業環境管理
・作業管理
・健康管理
・労働衛生教育
(出典:「職場における熱中症予防対策マニュアル」 厚生労働省)
建設業など、厳しい暑さの中で作業される方にとって、身近な対策として服装などを工夫することも調整すべき重要なポイント。
上記4管理の中で服装などを工夫することは「作業管理」にあたります。建設現場で浸透してきている、空調服を含むいわゆるファン付きウェアも服装での対策の1つです。
「空調服」とは
■衣服内の空気を循環させる服
実験概要
- 実験日時:
- 2019年7月3日(水)10:15~15:40(全5回)
- 場所 :
- 株式会社関電工 人材育成センター(茨城県牛久市)
- 実験内容:
- 屋外で軽い運動(約2kgの荷物の上げ下ろし)を15分程度行い下記項目を観測。
- 観測項目:
- 【環境】 気温、相対湿度、WBGT値 【実験参加者】 衣服内の気温と相対湿度、サーモ画像(表面温度)など
- 着衣条件:
- 実験参加者は2人。
1人は空調服(写真左)を着用、もう1人は一般的な 作業服(写真右)。
※インナーには綿製の半袖シャツを着用した。
7月3日 実験レポート
■実験スタート!
7月3日、実験場所である茨城県牛久市の天候は曇り。午前中は晴れ間がでて、アスファルトからの照り返しが強い時間もあり、暑く感じられました。午後は、時折薄日が差す程度で雲が広がりました。
実験は、午前10時15分から午後3時40分までに合計5回、株式会社関電工の人材育成センターの一角で行いました。
実験は2人で行い、1人は一般の作業服を着用、もう1人は空調服を着用し衣服内に気温と相対湿度を測定するセンサーを装着しています。
最初に、観測場所周辺のWBGT値やアスファルトの温度を測ります。その後、実験参加者2人の衣服内の気温をサーモカメラで撮影します。
結果発表!
空調服と一般の作業服とでは、どのような差が生じたのでしょうか。13:15~13:30について、衣服内の水蒸気密度のデータ、および温冷感と快適感の申告状況を取り上げて検証しました。
(*掲載している実験結果は、WBGT値が約25~26°Cの環境下で取得されたものです。)
■衣服内の水蒸気密度の違い
図1は、衣服内の水蒸気密度について表したものです。水蒸気密度とは、空気中に実際に含まれている水分量のことで、気温と相対湿度などから算出することができます。空調服を着用した実験参加者の衣服内の水蒸気密度はわずかに上昇しているのが認められるものの、作業服を着用した実験参加者と比較すると増加量が抑えられていました。これは、空調服に取り付けられた小型ファンの効果によって、周囲より蒸し暑い空気が衣服の外に放出されたためと考えられます。
水蒸気密度では空調服と作業服とで値に差が生じましたが、実際に2人の実験参加者はどのように感じたのでしょうか。図2は、実験参加者が暑いと感じたか、涼しいと感じたかを表したものです。縦軸は上にいくほど暑いことを表しています。作業服を着用した実験参加者は、実験開始5分で「やや暑い」と感じましたが、空調服を着用した実験参加者は「どちらともいえない」で変化はありませんでした。
また図3は、快適感を表したもので、縦軸の上にいくほど不快になります。作業服を着用した実験参加者は5分後に「やや不快」と感じ、15分後には「不快」と感じました。一方、空調服を着用した実験参加者は、作業開始から終了まで「快適」のままで作業を進めることができました。 ちなみに、衣服内の気温はどのように推移したのでしょう。 図4のグラフを見ると、作業服では33.5°Cから34.0°C、空調服では作業服より低い32.2°Cから32.7°Cで衣服内の気温が推移しました。 図1の結果より、空調服は一般的な作業服と比べて衣服内の水蒸気を外に逃がす効果が大きいことがわかりました。また衣服内の気温が変化しない場合でも、衣服内の水蒸気を適切に逃がすことで、暑さや不快感を感じにくくする効果が期待できます。
ポイント
・空調服を着用した人の衣服内の水蒸気密度・気温は、作業服を着用した人より低くなり、空調服を着用した人は15分を通してより快適に感じていました。(*掲載している実験結果は、WBGT値が約25~26°Cの環境下で取得されたものです。)
・熱中症の対策には、通気性の良い服を選び、衣服内の水蒸気を逃がして暑さを調整することが大切です。
■サーモ画像でもその差が!
サーモ画像で2人の衣服内の表面温度をピンポイントで測ってみました。
首回りの表面温度で比較すると、作業服(右側a)では34.1°C、空調服(左側c)では33.3°Cでした。胸周りの表面温度で比較すると、作業服(右側b)では32.9°C、空調服(左側d)では30.8°Cで、その差は2.1°Cとなりました。
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(左:空調服を着用 右:一般的な作業服を着用)
観測でわかったこと
- 空調服を着用した実験参加者の衣服内の水蒸気密度はわずかに上昇していることが認められるものの、作業服を着用した実験参加者と比較すると増加量が抑えられていました。風通しを意識して水蒸気がこもらないようにするなど、衣服を工夫し暑さを調節することも熱中症から身を守ることの一つとなります。
(*掲載している実験結果は、WBGT値が約25~26°Cの環境下で取得されたものです。) - 高温多湿の環境下で行われる屋外での作業は熱中症の危険を伴うため、作業管理の徹底が重要。空調服の活用などを含めた万全の熱中症対策を心掛けましょう。
ご協力:株式会社空調服
今回の実験にあたり、協力してくださった株式会社空調服や株式会社関電工をはじめとする皆様、ありがとうございました。「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、今後も熱中症対策について調査・情報発信を続けていきます。
※「空調服」は、(株)セフト研究所・(株)空調服の特許および技術を使用しています。
※「空調服」は、(株)セフト研究所・(株)空調服の商標です。