熱ゼロ研究レポート:プールにおける熱中症対策の実態調査
レポート No.15 プールにおける熱中症対策の実態調査
「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム
「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、公益財団法人B&G財団の協力のもと、同財団が管理するプール※241センターの管理者を対象に、「プールにおける熱中症対策の実態調査」を行いました。
※屋内プール、屋外プール、上屋付きプールを含む
調査サマリー
- ■直近5年のうち、約3割の施設でプール内やプールサイドなどで暑さによる体調不良を訴えた人がいた
- ■体調不良の症状としては、「めまいや顔のほてり(63.2%)」「体のだるさや吐き気、頭痛(54.4%)」が多い
- ■監視員や指導員からの水分補給や塩分補給、休憩の声がけは約76%の施設で行われているが、暑さ指数(WBGT)の値による利用中止判断はまだ1割ほどにとどまる
- ■施設管理者として利用者・監視員どちらにもケアする熱中症対策の呼びかけツールも求められている
■調査概要
- 調査方法:
- インターネット調査
- 調査対象:
- B&G海洋センター自治体管理者もしくは指定管理者
- サンプル数:
- 238人
- 調査対象期間:
- 2020年~2024年夏
- 調査時期:
- 2025年2月
※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。
※サンプル数は238となっていますが、1サンプルで複数施設について回答しているものもあるため対象センター数は241となります。
調査結果(1)
直近5年のうち、約3割の施設でプール内やプールサイドなどで暑さによる体調不良を訴えた人がいた
プールにおいて直近5年間に熱中症もしくは暑さによる体調不良を訴えた人がいたかを聞いたところ、「体調不良を訴える人がいた(プールサイド)」「体調不良を訴える人がいた(プール内)」「体調不良を訴える人がいた(その他)」と回答した施設の割合は約3割でした。発生場所としてはプールサイドが最も多く、体調不良を訴える人がいた中では約72%がプールサイドでの発生でした。
調査結果(2)
体調不良の症状としては、「めまいや顔のほてり」「体のだるさや吐き気、頭痛」が多い
プールにおいて直近5年間に発生した熱中症もしくは暑さによる体調不良の症状をわかる範囲で聞いたところ、本プロジェクトが毎年実施している「熱中症に関する意識調査」の過去数年の傾向と似ており、「めまいや顔のほてり(63.2%)」「体のだるさや吐き気、頭痛(54.4%)」の割合が多くなりました。プールでは特に、体が濡れて症状に気づきにくい可能性にも注意が必要です。

調査結果(3)
監視員や指導員からの水分補給や塩分補給、休憩の声がけは約76%の施設で行われているが、暑さ指数(WBGT)の値による利用中止判断はまだ1割ほどにとどまる
監視員や指導員からの熱中症予防・対策にかかわる声がけが積極的に行われています。対策として「監視者への熱中症予防・対策指導を行う」と回答した割合は約56%と半数以上であり、監視員や指導者から利用者への声がけに繋がる活動も見受けられます。「更衣室の空調管理を徹底する」「テントやシェルターでの日陰の休憩場所を作る」「B&G財団支援事業の救護室を設置する」「プールサイドに遮熱性舗装を施す」といった設備面での対策は約2割以下にとどまっており、屋内・上屋つき・屋外と、プールの場所に合わせた設備上の対策が今後も求められそうです。また水温や気温に比べ、暑さ指数(WBGT)をプール利用の中止判断材料としている回答は1割程度でした。WBGTへの理解促進と共に、熱中症計の設置など、具体的にその場の指標が確認できる環境づくりも課題とみられます。
調査結果(4)
施設の改善も利用者・監視員どちらにもケアする熱中症対策の呼びかけツールも求められている
「利用者に基本的な熱中症対策を呼びかけるツール(62.2%)」「監視員などへの熱中症予防指導のためのツール(59.7%)」といったソフト面、「日陰を作るシェルターやテントなど設備の充実(42%)」「空調の効いた休憩所や救護室など設備の充実(55%)」といったハード面もどちらも半数近いニーズがあることがわかりました。また、回答者の声としては、監視員の身をどう守るかという点での苦労や、今回の調査で167施設と最も多かった上屋付きプールの施設特有の蒸し暑さへの懸念の声もあがりました。

【その他】の回答一部抜粋
- ・利用者もですが、監視員さんの熱中症対策で苦労している。日中プール室内は40℃を超える高温となり、監視員さんは数時間業務が続く。こうした中で、どう過ごすのが熱中症を予防できたり少しでも涼しく監視できるのかなどの情報が欲しい。
- ・取り外し型の屋根付きなのですが、ハウスのような状態になり、プール内が蒸されて室温がかなり高くなるので、屋外プールと同様の基準で利用制限をかけてよいのか、判断に迷いました。猛暑下の指針は完全な屋外だけでなく、全体的な指針があればありがたいと思います。
■プールでも熱中症に気をつけよう
プールは水の中にいるため油断しがちですが、遊んだり泳いだりしている時も実はたくさんの汗をかいています。いつのまにか脱水を起こしていることがありますので、運動によって失われる水分をこまめに補給する必要があります。プールサイドも暑くなるため、見学者も熱中症対策を欠かさないようにしましょう。
- •こまめに水分補給しよう
- •適度に塩分補給しよう
- •帽子などで直射日光を遮ろう
- •日陰で休憩しよう
- •身体を冷やすグッズを準備しておこう
- •睡眠を十分にとろう

専門家による解説

三宅康史先生
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会元委員長
プールは水に浸かっているため安心に思われがちですが、実際には筋肉運動を伴い、脱水や体温上昇が進みやすく、熱中症のリスクが高い場所です。屋根付きプールでは室温や湿度により、体温を下げることが難しくなりがちです。体調不良が見られた場合は早めに熱中症を疑うことが大切です。
対策としては、喉の渇きを感じにくくても、休憩時にはスポーツドリンクなどで水分と塩分を補給し、無理をせず早めに切り上げる判断も必要です。飲料は冷えた状態を保てるように、日陰で保冷材の入った保冷バッグに入れると良いでしょう。
管理者は定期的な休憩と水分補給を促し、異変があればすぐに声をかけ、涼しい場所での休息を促しましょう。また、冷たい水分補給が自由にできる冷水器や屋外で移動が可能な大型クーラー、クーラーの効いた経過観察室の整備、積極的な換気、十分な監視体制の確保ができると良いでしょう。消防や医療機関との連携体制も事前に整えておくことが重要です。今後も、実態調査を継続して行い、プールにおける熱中症対策の実効性を高め、それを基に管理者側が利用できる呼びかけツールや熱中症対策マニュアル作成につなげていくことが望まれます。
対策としては、喉の渇きを感じにくくても、休憩時にはスポーツドリンクなどで水分と塩分を補給し、無理をせず早めに切り上げる判断も必要です。飲料は冷えた状態を保てるように、日陰で保冷材の入った保冷バッグに入れると良いでしょう。
管理者は定期的な休憩と水分補給を促し、異変があればすぐに声をかけ、涼しい場所での休息を促しましょう。また、冷たい水分補給が自由にできる冷水器や屋外で移動が可能な大型クーラー、クーラーの効いた経過観察室の整備、積極的な換気、十分な監視体制の確保ができると良いでしょう。消防や医療機関との連携体制も事前に整えておくことが重要です。今後も、実態調査を継続して行い、プールにおける熱中症対策の実効性を高め、それを基に管理者側が利用できる呼びかけツールや熱中症対策マニュアル作成につなげていくことが望まれます。
「熱中症ゼロへ」プロジェクトは、今回の調査のように、様々なシーンにおける熱中症のリスクを伝え、より個別の生活者への呼びかけを行ってまいります。