熱中症について考えよう!BIG対談(第6回)
サッカーコーチ直伝! ~健康な生活がサッカーと熱中症に強い子どもを育てる~
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日本サッカー協会A級コーチ
ドイツサッカー協会B級コーチ高峯弘樹さま -
日本サッカー協会4級審判員
気象予報士澤口麻理
(2015年 実施)
「水を飲まずに練習」はもう古い!今や水分補給は常識
澤口:
高峯コーチは10歳からサッカーを始められたとのことですが、昔の練習はどんな感じでしたか?
高峯:
ご想像通り、当時は練習中に水は飲むな、という時代でした。なので「いかに隠れて水を飲むか」ということに頭を使っていました。休憩もなかったので、わざとボールを遠くに飛ばして「取ってきまーす」と行って、こそっと飲んで日陰で涼んで帰ってくるというような工夫をしていました(笑)。塩分を補給するなんて発想もありませんでした。
澤口:
やはり昔は我慢を強いる傾向があったんですね。今と昔で練習方法は違いますか?
高峯:
全然違いますね。特に夏場は15~20分に1回くらい休憩をして、必ず水分補給をするようにしています。今や水分補給は常識ですし、熱中症をすごく意識して試合や練習をしています。
サッカーの夏大会では、WBGT(熱中症の危険度を示す暑さ指数)を表示しています。数値が高い日は、試合前に審判が「水分補給の時間を作ります」と事前告知し、ハーフタイムの休憩以外に、試合途中でも水分補給の時間を設けるようにしています。
澤口:
こまめな水分補給は簡単に出来る熱中症対策ですね。選手ももちろんですが、審判や観客など、会場にいるすべての方が水分補給を心がけ、熱中症に注意しないといけないですね。
サッカー指導者の考える熱中症対策
澤口:
熱中症対策で、サッカー指導者として特に気を付けていることはありますか?
高峯:
基本的なことですが暑い時間帯には運動しない、運動中はこまめに水分補給をする、あとは食事・睡眠時間をはじめとした体調管理をしっかり行うことを重視しています。最近の夏は、都会では照り返しもありとにかく暑いですよね。そもそも運動してはいけないような状況になることもあり、朝晩の比較的涼しい時間のみの練習にするなど、活動する時間帯は気を付けています。
澤口:
今年も平年並みか、それ以上に暑くなるという予想が出ていますので、注意が必要ですね。暑さ対策として冷却グッズは使用しますか?
高峯:
休憩中にタオルを氷水で冷やして、首筋を冷やしたりしますね。
澤口:
汗を拭くのと同時に体温が下がるので、いいですね。「熱中症ゼロヘ」でも、氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などを冷やすことを熱中症の応急処置の方法として紹介しています。
練習前から顔が真っ赤!小学生の運動は大人が見守って
澤口:
練習中、気を付けていても熱中症にかかってしまうことはありますか?
高峯:
ありますね。練習の休憩中に水分補給の時間を作ってはいますが、朝ご飯を食べてこなかったり、睡眠不足だったりすると、それが一因となり熱中症にかかることがあります。
澤口:
まずは自分の体調管理が第一ですね。ジュニアサッカー世代が、熱中症対策で気を付けることはありますか?
高峯:
小学生は基礎代謝が高いので、体温がもともと高めなんですね。練習に来た時点で顔が真っ赤だったりすることもあります。子どもは体力もないので、水分補給を勧め、指導の際も注意して見守るようにしています。
澤口:
大人と違って、子どもは集中していると自分が熱中症にかかっていることに気づかないので、周囲の大人が気づかないといけませんね。では、大人が運動する際の注意点はありますか?
高峯:
大人の場合、日常で運動習慣のない方が突然運動すると、熱中症で倒れる危険性が高いと思います。汗をかくことに慣れていなくて、体に熱がこもりやすくなりますので。日頃の運動習慣があると、それが熱中症対策につながると思います。
澤口:
大人はつい運動不足になりがちですよね…私も夏に向けて、運動習慣を身に付けたいです!
熱中症危険度の"見える化"
澤口:
高峯コーチは、熱中症についてどのように学んだのですか?
高峯:
以前はありませんでしたが、最近のスポーツ指導者の資格取得の講習会では、必ず熱中症についての講座があります。昔のように休まない・水を飲まない、といったような指導方法は、少なくともサッカーの世界ではなくなってきていると思います。
澤口:
正しい知識が広まってきているのはいいことですね。気温と湿度はチェックしますか?
高峯:
朝の天気予報は必ず見ています。特に気温は気になりますね。
澤口:
「熱中症ゼロヘ」では、熱中症の危険度が分かるボードを作っています。"見える化"することで、熱中症の危険性を意識し、自分ごととしてとらえてもらいたいと思っています。練習中、熱中症の危険度を"見える化"していたりしますか?
高峯:
練習中はしていないので、このようなボードがあるといいですね!意識すると思います。
強いサッカー選手を作るメニューとは?
澤口:
熱中症に負けない体を作るには、食事や睡眠が大切とのお話がありましたが、サッカー指導者の目線で、夏場の食事メニューのオススメはありますか?
高峯:
暑いと食欲がなくなりがちですが、さっぱりしたものばかり食べていると体力が落ちてしまいます。合宿ではカレーライスとキムチが定番です。スタミナをつけるには、白ご飯が進むようなメニューがいいですね。サッカー選手の場合、大人だと一試合終えると体重が5キロ近く落ちたりもします。体重を戻し体力を回復させるために、塩分・水分補給や炭水化物、糖分などを摂取します。
澤口:
一試合で5キロも!それだけのエネルギーを消費しているということですもんね…。カレーライスやキムチだと塩分もしっかり摂れていそうですが、試合中に塩分補給はできるのでしょうか?
高峯:
公式試合では、試合前とハーフタイムに塩ひとつまみをなめさせるようにしています。また、スポーツドリンクには塩分と糖分が入っているので、積極的に飲むよう選手に勧めています。
子どもの熱中症対策、コーチはパパママ!
澤口:
最近の子どもは朝ご飯を食べなかったり、夜更かしになりがちとのことですが…。
高峯:
そう感じます。熱中症対策を突き詰めて考えると、食生活や習慣が大切ですね。サッカーの技術向上は練習だけじゃなく、生活からつながってくるものだと思います。生活習慣は子どものサッカー技術・運動能力に大きく影響します。練習直前にあわてて食べる、では準備不足ですよね。個人的な感覚ですが、サッカー、特に育成の年代のカテゴリーでは、指導者レベルでの熱中症対策への意識は高まりつつあるように感じます。子どもたちが規則正しく健康な生活を送るためには、ご家庭での協力や意識を高めることが欠かせませんね。
澤口:
ジュニアサッカーの情報サイト『サカイク』では、保護者の方向けの情報として「健康と食育」に関するコラムも掲載されています。熱中症に負けない強い体作りは、サッカーの技術向上のための基礎としても大切ですね。本日は貴重なお話を、ありがとうございました!
今回の対談は、「サカイク」の協力により実現しました!
少年サッカーならサカイク http://www.sakaiku.jp/