熱ゼロ研究レポート:「きぐるみの中の人」は過酷熱ゼロ研究レポート:「きぐるみの中の人」は過酷?

レポート No.1 夏期のイベント時における
「きぐるみの中の人」の温度環境について

「熱中症ゼロへ」プロジェクトチーム

背景: ゆるきゃら®をめぐる現在の状況

図1 ご当地キャラ・ゆるきゃら®の検索数図1 ご当地キャラ・ゆるきゃら®の検索数

近年のゆるきゃら®ブームにより、全国の地方自治体や企業などのPRを目的としたゆるきゃら®の着ぐるみの作成や着ぐるみを活用した活動が季節を問わずに行われており、その注目度もここ数年で大幅に上昇している(図1)。
※googleトレンド2014年10月21日現在
そこで、夏季の屋外イベントでの着ぐるみでの活動時において、(1)周囲の温熱環境と着ぐるみ内の温熱環境、(2)ゆるきゃら®の中の人の血圧・体温(腋下)・体重などの変化、を調べて、夏季におけるゆるきゃら®などの着ぐるみ活動時の状況を把握し、今後の活動時の参考情報とすることを目的とする。

図1 ご当地キャラ・ゆるきゃら®の検索数図1 ご当地キャラ・ゆるきゃら®の検索数

検証方法

図2 Case2イベント時の熱中くん(右)図2 Case2イベント時の熱中くん(右)

2014年夏季のイベントにおいて、活動環境(日陰)の気温・湿度および活動時におけるゆるきゃら®内の気温・湿度も同時に観測した。さらに、イベント実施会場に近い気象庁・東京大手町の気温・湿度(10分値)との比較を行った。

被験者となったゆるきゃら®「熱中くん」の中の人である成年男性1名(40代)(以降、被験者)については、イベント当日以外の平日に血圧・脈拍・体温(腋下)を計測して平常時の生体情報を取得するとともに、ゆるきゃら®活動直前および活動直後に血圧・脈拍・体温(腋下)を取得した。

※被験者には本調査の趣旨及びゆるきゃら®の中の人として活動いただくことを事前に説明し同意を得たうえで実施した。

図2 Case2イベント時の熱中くん(右)図2 Case2イベント時の熱中くん(右)

Case 1: 暑熱日

埼玉県三郷市2014年8月2日図3 Case1イベント会場と着ぐるみ内の気温と湿度の変化図3 Case1イベント会場と着ぐるみ内の気温と湿度の変化表1 着ぐるみの中の人の血圧・脈拍・体温の変化表1 着ぐるみの中の人の血圧・脈拍・体温の変化

Case 2:雨天日

東京都千代田区 2014年8月28日図4 Case2イベント会場(日陰)と着ぐるみ内の気温と湿度の時系列変化図4 Case2イベント会場(日陰)と着ぐるみ内の気温と湿度の時系列変化

ゆるきゃら®としての活動メモ

Case1の日は、着ぐるみの中にいなくても暑い1日であり、活動時間も15分と短めを心がけた。その一方で、Case2の日は、屋外で過ごすには半袖では寒くなるほどの気温であったこともあり、ゆるきゃら®の中で活動する時間も30分以上と長くなった。
また1回位あたりの活動時間に関しては、お客様とのふれあいの状況次第でその場から離れることが困難であり、イベント実施者のみでは決められない場面も多数あった。

結果と今後の課題

  • Case1のイベント当日は、会場付近でもおおよそ33℃と体温に近い気温であったためか、着ぐるみ内で活動することで大幅な気温上昇は見られなかった。一方、湿度は着ぐるみ内の活動時にイベント会場観測時と比べて相対湿度で15%以上の上昇が見られた。 また、着ぐるみ内および大手町の気温と湿度から求めたWBGT近似値は31℃を超えており、着ぐるみ内外を問わず酷暑であった。
  • Case2のイベント当日は、大手町の最高気温が22.8℃と半袖では肌寒い天候で、降水が認められるような湿度の高い環境であった。 10%程度の湿度の上昇と、5℃以内に気温上昇は確認された。また、大手町のWBGT近似値は常に25℃以下であったが着ぐるみ内では27℃にまで達し、「運動や激しい作業をする際には定期的に十分な休息を取り入れる必要がある」状況であった。
  • 夏季の暑熱環境に限ると着ぐるみの中の環境は温度よりも湿度の上昇が顕著であり、湿度対策がより重要であると考えられる。
  • Case2で熱中くんとほぼ同時に活動していた別の着ぐるみに入っていたスタッフは、熱中くんの中の人と同様の環境でも疲労が激しかった。熱中くんの中の人に比べてゆるきゃら®としての活動歴は少なく、ゆるきゃらの中の人の状況を判断するには、暑熱環境に対する慣れも考慮するほうが望ましいと考えられる。