暑さへの備え 熱中症について学ぼう:暑さへの備え

暑さへの備え

予防・対策

気候変動による影響で、今後も暑さが激甚化する恐れがあります。熱中症は、命にかかわる危険な症状です。台風や大雨などの気象災害と同じように、熱中症に対しても防災意識を高めていくことが今まで以上に必要となります。本格的に暑くなる前から、日頃の備えを体・行動ともに進めることで、自分や身の回りの人を守りましょう。

  • 体から備える
  • 行動から備える

「体」から備える

上手に汗をかいて放熱できるようになるために、本格的に暑くなる前から、体を暑さに慣らして汗をかく練習「暑熱順化」を意識しましょう。暑熱順化には個人差もありますが、数日から2週間程度かかります。生活スタイルに合わせ、無理のない範囲で暑さに備えた体づくりを進めましょう。普段から運動する習慣がない人や難しい人も、日常生活の中できっかけを見つけて継続することが大切です。

日常生活に暑熱順化を取り入れよう

日常生活に暑熱順化を取り入れよう

※上記を行っても必ず暑熱順化できるわけではありません。また、実施時は個人の体質・体調、その日の気温や室内環境に合わせて無理のない範囲で行ってください。運動時は屋外や室内の天気や気温などの環境の変化に注意し、水分や塩分を適宜補給して、熱中症に十分注意してください。

ペットの注意点ペットの注意点

発汗による体温調節機能が備わっていない犬や猫は、暑熱順化ができません。暑さに慣れないからこそ、屋外・室内に関わらず、ペットが生活する環境は涼しく快適に保つことが重要です。(監修:Pet Clinicアニホス院長 博士・獣医学 獣医師 弓削田直子先生) 

「行動」から備える

熱中症予防・対策につながる行動を夏前のルーティーンとして組み込みましょう。まずは自分のいる環境や熱中症に関する知識を積極的に集めましょう。また暑さ対策グッズや、いざという時に備えて応急処置のアイテムも一式揃えておくと安心です。エアコンは、必要なタイミングで「すぐに」「効率的に」使えるよう、事前の点検も忘れずに。

①情報を集める
  • 熱中症を知る
    熱中症を知る

    熱中症は実際にどのような症状が出るのか、どのように予防できるのか、なってしまった時にはどうしたらよいのか、といった熱中症に関する知識を持つことが、暑い環境で体調が悪くなった際の対処に役立ちます。

  • 気温や湿度の確認を習慣化する
    気温や湿度の確認を習慣化する

    いま自分のいる環境の気温や湿度をいつも気にしましょう。室内の場合は、温湿度計をおいて時々見るようにしましょう。また、日々の天気予報や週間予報をチェックして予定をたてる習慣をつけるとよいでしょう。
    日差しを遮ったり風通しを良くすることで、気温や湿度が高くなるのを防ぎましょう。また気象庁と環境省から共同発表される熱中症警戒アラートも確認しましょう。府県予報区単位で前日17時、当日5時頃に最新の予報が発表されます。

  • 住んでいる地域について知る
    住んでいる地域について知る

    自分の住んでいる街では、どのような場所や状況で熱中症に注意が必要か、身近な人と一緒に考えてみましょう。また、暑さから身を守れる場所や、大人に助けを求められる場所についても確認しましょう。

②暑さ対策・応急処置のグッズを揃える

対策・応急処置 腕や手のひらを冷やす

水分・塩分を補給する、日差しをよける、体を冷やすなど、目的別にバランス良く対策グッズを用意しましょう。対策グッズをひとまとめにして、普段の外出の持ち物に加えたり、災害時の非常用持ち出し袋に追加したり、夏場や暑い日ならではの対策セットを小分けに作っておくこともおすすめです。

※経口補水液
経口補水液は、脱水症の改善および治療を目的とした飲料です。スポーツドリンクとは異なり、脱水状態でない方が日常の水分補給として飲むものではありません。医師からナトリウム又はカリウム摂取量の制限を指示されている場合は、必ず医師や薬剤師に相談または指導を受けてください。

ここがポイント!ここがポイント!

夏が来る前に、自分の身を守るだけでなく、熱中症になった人を助けられる知識を身に着けましょう。両側の首筋、脇の下、脚の付け根など太い血管の通っている場所を冷やしましょう。体全体を冷やすことが困難な状況では、露出している腕や手のひらを冷やすことでも対策につながります。また、冷却剤などが手元にない場合は、皮ふに水をかけて、うちわや扇子などであおぐことでも体を冷やすことができます。

日常生活に暑熱順化を取り入れよう

③エアコンを効率的に使用する
■夏が来る前の備え:「試運転」や「フィルター掃除」を

夏が来る前の備え:「試運転」や「フィルター掃除」を

  • ①試運転を行う
    夏本番はエアコンの修理や設置工事が大変混み合い、いざ不具合が起きても修理や取り換えに待ち時間が発生する可能性があります。本格的に暑くなる前に、各メーカーの推奨に従って試運転を行い、「すぐに使える」状態になっているか確認しましょう。
  • ②フィルターを掃除する
    フィルターにほこりがたまっていたり、内部が汚れていたりすると冷房効率が悪くなり、余分な電力を使ってしまいます。1年間掃除をしていないフィルターでは約25%も電気代がアップ。目安としてフィルターの掃除は2週間に1回、内部の掃除も定期的に行うようにしましょう。
  • ③室外機の周辺に物を置かない/直射日光を避ける
    室外機は室内から運んできた熱を外に排出する装置です。室外機の周辺を涼しく保つことで、排熱がスムーズにでき、冷房効率が上がります。室外機周辺に物は置かずに風通しを確保し、日よけ、すだれ・よしずを使って室外機に直射日光が当たらないようにしましょう。
  • ④窓からの直射日光を防ぐ
    窓周辺から入ってくる熱を減らすことで、室内の温度上昇を抑えます。窓の外のすだれやよしず、シェードなどを使って直射日光を遮り、室内ではカーテンを使用して断熱効果を上げましょう。
■夏が来たら実践:エアコンの効率的な使い方

夏が来たら実践:「エアコンの効率的な使い方」

  • ①室内が暑い場合は温かい空気を外に逃がしてからエアコンをON
    室内が温まって外よりも暑く感じる場合は、まず窓を開けたり、換気扇を回したりすることで温まった空気を外へ逃してから、エアコンをつけましょう。空気を出す方向(窓や扉のある方向)に向かってサーキュレーターを置くと効率的に熱を逃がすことができます。
  • ②室内温度の目安と風量・風向の設定
    温度計や熱中症計で室内環境を確認しながら、室内温度28℃を目安としてエアコンの温度設定を行います。設定温度を下げすぎないことも節電には大切。夏場設定温度を1℃上げると約13%省エネになります。風量は「自動」に設定すると、効率的に調整されます。暑く感じる場合は設定温度を下げるのではなく風量を増やしましょう。また、冷たい空気は重たく下にたまるため風向は天井に対して上向き(もしくは水平)に設定しましょう。
  • ③サーキュレーターの効果的な置き方
    エアコンとサーキュレーターを併用することで、設定温度を下げすぎなくても、室内をむらなく涼しくすることができます。サーキュレーターはエアコンの下に置き、上向き(エアコンと同じ風向)にしましょう。

ここがポイント!ここがポイント!

エアコンは、必要なタイミングで「すぐに」「効率的に」使えるようにしておきましょう。また、エアコンなどの適正使用と併せて、住宅自体の見直しをすることも効果的です。家を新築、リフォームする際は高断熱・高気密住宅にすると、熱の出入りが少なく、さらに効率的に部屋を涼しくすることもできます。他にも、家の構造を工夫して風の通り道を作る、内窓や断熱サッシを導入して外部からの熱を遮断するなど、住まいの環境を整えることで暑さ対策と同時に電気代やCO2排出を削減することにもつながります。

専門家による解説

  • 三宅康史先生

    三宅康史先生
    帝京大学医学部教授
    帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
    日本救急医学会評議員・専門医・指導医
    熱中症に関する委員会委員

    個人の対策や身近な人への声がけも進んでおり、熱中症に対する一般意識は年々向上していると感じます。一方で、暑さが長引くような年も見られ「この暑さがいつ終わるのか」今まで以上に身体的、心理的負担が続くことも考えられます。こうした負担を軽減するためにも、本格的に暑くなる前から熱中症に対する備えを体・行動面から進めておきましょう。
    高齢者や日頃から汗をかく習慣のない人は、軽めのストレッチやぬるめのお風呂に浸かることでも暑熱順化につながります。自分のライフスタイルに合わせて、普段の生活に無理なく取り入れることが継続の鍵です。また、日々の過ごし方を客観的に見ている身近な人が行動を選んであげる、という手もあります。昨今は、余暇としてサウナを楽しむ人も増えてきました。サウナは自律神経を整えるほか、汗をかきやすい体づくりとしても有効ですが、こまめに休憩をとり、頑張りすぎないように行うことが前提です。
    暑さ対策アイテムやエアコンの点検などは、本格的な暑さが来る前に余裕をもって確認しましょう。いざという時の応急処置をスムーズに行うためにも、自分や周りの人が慌てないように備えたいものです。暑さによる体調不良が見られる場合は、迷う前にまず熱中症を疑い、迅速な応急処置を心がけましょう。体を冷やす際は太い血管の通っている身体部位が望ましいですが、難しい場合は比較的自由が利き、服装や髪型で隠れにくい「手・腕まわり」でも構いません。脳やほかの臓器に比べれば少ないものの、手にも血液は集まりやすいため体を冷やすには効果的です。

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【監修】
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会委員 三宅康史 先生